特別インタビュー2
Interview2 古畑 勝則先生
レジオネラ属菌、温泉施設や循環式浴槽で有名に
 20数年間、レジオネラ属菌に関わってきた古畑先生。公務員時代に、水質検査を担当し、1970年代後半にアメリカでレジオネラ属菌が集団発生した当時、職場関係者に「日本でも起こるぞ、勉強してこい」と言われ、すでにレジオネラ属菌を研究していた先生に付いて勉強することになった。

 日本でも15年ほど前、ビルの冷却空調設備を感染源として、死亡者2人を含む約60人の被害者を出して話題になった。レジオネラ属菌は呼吸器系の細菌。最終的には肺を侵す病原菌だ。しかも感染経路は空気であるとのこと。
 ただ、たとえ感染しても発症率が低く、ほとんどの場合は重症化しないという。「重症化する肺炎型はまれで、ほとんどは熱型で夏風邪のようにちょっと鼻水が出たり、だるかったりという程度。重大にならずに、そのうちに治ってしまいます。」
 しかし、軽視はできない。 「レジオネラ属菌が引き起こす肺炎は致死率が高いんです。」と古畑先生はレジオネラ属菌の怖さを語る。レジオネラ肺炎の致死率は約15〜30%、これはあのSARSにも匹敵する数字である。
レジオネラの細胞形態の写真
↑レジオネラの細胞形態
 近年、温泉におけるレジオネラ属菌の事故が相次いでいる。「レジオネラ属菌の生息場所は主に循環式浴槽、シャワー、ジェットバス、噴水、加湿器などです。近年の都市型の大型銭湯のブームにのってレジオネラ属菌の発生も急激に増加しています。」思いもかけぬ事件というべきか。それから、古畑先生は情報収集のため、全国各地の温泉をまわることになる。
 「温泉と聞くと、うらやましがる人がいらっしゃいますが、大変なんですよ。1日、何箇所も温泉に行くとふらふらとしてしまって。湯あたりを起こして、気分が悪くなることもあるんですよ(笑)」と古畑先生は苦労話を語る。
 では、何が原因で温泉や銭湯でレジオネラ属菌が大量発生したのか。
 「いろいろなことが考えられますが、一番の原因は人間のエゴに尽きると思います。人の勝手でいろいろなものを作りすぎました。よりよい生活を求めて、温泉施設やいつでも入れるお風呂が増えました。それがたまたまレジオネラ属菌という微生物にも住みやすい環境を作り上げてしまう結果になったのでしょう。」と古畑先生はこれまでの情報の集積により核心をつく。
 今後、レジオネラ属菌に対してどんな対策が必要なのか。
 「まずレジオネラ属菌が増殖できない環境を常に保つ事。そして実際にレジオネラがいない安全な状況であるという確認を、定期的に行う事が重要になります。その安全管理の為には、今まで以上に迅速な検査方法の開発が必要になってくるでしょう。」

現在の検査方法は培養法であり、検査結果が出るまでに1週間ほど時間がかかる。しかし本当の安全管理のためには1週間前の水の状況ではなく、現在の水の状況を知る必要がある。
これが現行法である培養法の最大の欠点だ。

古畑 勝則先生
培養法とLAMP法の併用が感染拡大を防ぐ
そこで、注目され期待されているのが、LAMP法による遺伝子検査。栄研化学は平成16年3月に環境水用のレジオネラ検出試薬「Loopampレジオネラ検出試薬キットE」(販売元:栄研化学)を発売している。「早く検査結果がほしいというニーズの中で、とにかく数時間で結果が出るというのが最大のメリットです。」と言いながらも、さらに古畑先生は遺伝子検査の問題点についてもふれる。

「今のところレジオネラ属菌の検査方法は培養法がスタンダードとされています。それは何故かといいますと、培養法は生きた菌の存在を直接確認できるからです。LAMP法は遺伝子検査ですので、必ずしも生きた菌でなくても、その菌の中にある遺伝子が検水中に存在していれば検出する可能性があります。」
 そして古畑先生は、培養法とLAMP法の併用を提案する。

「LAMP法でレジオネラ属菌の遺伝子が検出されるという事は、レジオネラ属菌の繁殖場所が間違いなくあるということを示しています。LAMP法はレジオネラ属菌の生息場所を探し出す方法としては最適だと思います。迅速な検査ができれば、それだけ感染の拡大が防ぐことができます。そしてLAMP法で陽性となった場合は、培養法で検査を行えば生菌数の確認をすることができます。」とLAMP法に迅速検査のメリットを最大限に引き出そうとしている。
 実際に厚生省も迅速な検査方法を強く要望している。LAMP法の価値は今後上昇していくものと考えられる。それは緊急を要する場面で、とても有効だからだ。

最後に、LAMP法について、率直な感想を聞いてみた。
 「LAMP法のキットは、抽出がセットになっています。別立てで、抽出というステップを踏まなくても、サンプルを濃縮してやれば、あとは試薬と混ぜるだけ。抽出と検出が同時にできるのはすごいですね。抽出はどうしよう、試薬はどこのを使おうといった検討の手間がいらない。ですから、非常に簡単に検出しやすい。学生でもできるほど簡単です。一般的に抽出ステップは、重要であり、難しいですからね。」と今後の期待も込めて好印象を抱いているようだ。

また、ネットで24時間、LAMP法のキットが購入できるシステムである e Genome Order については、「緊急を要する場面にはとても有効。迅速に供給してもらえるのはありがたい。ニーズにマッチした役に立つシステムだと思いますよ」と万全な供給体制においても評価をいただいた。

Loopampレジオネラ検出試薬キットE
(栄研化学)の写真
↑Loopampレジオネラ検出試薬キットE
(栄研化学)
前のページへ