特別インタビュー
Interview1平田行正さん
ライセンス得たいとLAMP法アタック
平田行正さんすでにLAMP法を実践の中で活用している人も少なくはない。和歌山県農業協同組合連合会の平田行正さんもその一人。
「植物バイオセンターという職場で、フリー苗生産、つまり優良種苗の大量増殖をやっているんです」という。
簡単にいえば、ウイルスなどの病気にかかっていない花の苗をつくっているのだそうである。「フリー化(無毒化)というんですけど、つまり病害を検定するんです」。
今回、LAMP法を使って検定法を開発したのはウイロイドという植物の病気の1種で、現在、全国の菊栽培農家でもこの病害のために億単位の損害を被っているのだという。「農協でこんな研究をしているのは珍しいんじゃないかな」と笑う。
平田さんがLAMP法を知ったのはバイオに関するニュース記事。それまでの遺伝子増幅法といえば、世界のスタンダードは他社の遺伝子増幅法。「感度は今一つだったし、なんといっても時間がかかりすぎましたから、簡易、迅速、精確、安価のLAMP法には魅かれました」と当時を振り返る。
「純国産だからライセンスが得られるかも知れないって思いましてね。すぐに栄研化学さんへ話をしたんですけど、実に丁寧な応対で、うれしかった」と語る。
ウイロイドの写真
↑ウイロイド
内部の説得と外部交渉で大車輪の働き
それからの平田さんはまさに大車輪。外は栄研化学とのネゴシエーション、内は農協連内部の説得工作。「農家の生産性が上がりますよ、生産物のブランド化ができるんですよ、懸命に説得しましたね。とにかく生産者サイドに決定的なメリットがあることを力説しました」。結果、平田さんの努力は報われた。「ウイロイドの問題にケリがつくのなら」ということで、上層部の了解を得ることができたのだという。
こうしてLAMP法の導入を実現し、すでに行なっている年間2500の検定をLAMP法に置換えようとしている平田さんにあえてLAMP法の問題点を聞いてみる。
「感度が高すぎる。知らなければ済んだのにと思ってしまうくらい高い感度なんですね。それに特異性が高すぎること。そしてプライマー設計、馴れが必要かな」と短くも鋭く指摘した。
LAMP法を活用しての今後の展開に平田さんの思いは膨らむ。「病害診断、フリー化技術を開発したいし、優良種苗の増殖・販売。LAMP法チェック済を”売り”にしたいですね」という平田さんは研究者というよりもその顔はプレイングマネジャーといった風情である。
仕事大好き人の夢は世界の農協ブランド
平田行正さん平田さんが和歌山県農協連合会に腰を落ち着けるまでのいきさつはおもしろい。
「大学を出た頃、世の中バイオブームで、故郷に近い山口県のある企業に就職したんですけど、上司とうまく行きませんで」と苦笑い。若気の至りであったという。
「せっかく農学部を出たんだからやっぱり『土』に密着した仕事。 水と太陽と土ですよというわけで、原点に戻って」という平田さん だが、やはり「企業家タイプの農協、新しい農協の姿を目指したい とも思いましたね」と意欲的であったことに変わりはない。
以来、10年−−。
根っからの仕事好きにみえる平田さん、「一日のうち、14時間は 仕事してますね。2時間は家事と育児。。家でも職場でもボクは子鹿のよう に大人しい存在です」と笑った。
平田さんの農協連では大手企業とのタイアップで、スターチスという花の苗生産を中国で始めているという。世界の農協、新しい農協の姿を思い描き、求め続ける平田さんの夢は果てしなく大きかった。
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